SPECIAL REPORT
帝京高校では、特進コース、進学コース、インターナショナルコース、アスリートコースという4つのコースを設けて教育を行っているが、その中で最も歴史が浅いながら躍進しているのが「特進コース」になる。作られたのは今から7年前、当初から難関大学への進学に特化した教育を行っていたが、そのメソッドは進化し、進学実績も当初の予想を超えて大きく伸びている。
帝京高校の特進コースでは、一人ひとりが明確な目標を持ち、勉強に明け暮れる3年間を過ごす。一見すると厳しい高校生活を想像するが、卒業生は口をそろえて「全く後悔していない。こんなに頑張れたことが自信になった」と話す。今回は、卒業生のみなさんに、自身の高校生活を振り返ってもらいながら、特進コースの魅力について話を聞いた。
<Kさん>
入学時から難関大学に進みたいと目標を定めており、3年間成績は上位をキープ。大学生活では広い教養を身につけながら、就きたい仕事を探したい。
<Mくん>
高1の3学期にアスリートコースから特進コースへ。高2から飛躍的に成績を伸ばし、念願の医学部に合格。将来はがん治療に携わりたい。
<Sさん>
受験の際には英語を受け持っていた先生のタイピンを借り受け、お守りに持って行くほど先生への信頼が厚い。大学では経営やマーケティングについて学びたい。
<Iくん>
進学コースで出願をしたが、入試の成績が良好で特進コースへの入学を打診されスライド。苦手だった英語を先生のきめ細かい個別指導で克服。大好きな歴史を学びたいと歴史学科を受験する。
<Kさん> 高校1年最後の模擬試験のあと、先生に進路についての最初の面談をしていただきました。その時はまだ志望校が決まっていなかったのですが、「MARCH以上の大学に行きたいと思っている」と先生に話すと、「勉強のペースを落とさないで、このまま上位の成績をキープできるようにしよう」と言って下さいました。特進の先生は模試の後の面談や面談週間以外でも本当によく声をかけてくれて、親身になってくれます。モチベーションを維持できたおかげで、得意の英語は3年間、偏差値60後半~70前後を取り続けることができ、受験の時も得点源にすることができました。私は最初、国立志望だったのですが、高2の秋に私大受験に切り替えています。さんざん悩みましたが、その時もいろんな先生に相談して自分の気持ちを確かめていきました。
<Mくん> 高校1年の時はアスリートコースでサッカー部に所属していました。当初はサッカーに関係する将来を考えていたのですが、夏に祖父が病気で亡くなったのをきっかけに、人の命を救う医学の道に何としても進みたいと考えるようになりました。一念発起して医学部を目指し、高校1年の3学期に特進コースに編入。やる気はあったものの成績は下位の方だったので、特進コースでやっていけるかどうか不安しかありませんでした。コース主任の曽我先生にありのままの気持ちを相談したところ、「一緒に頑張ろう」と言って下さったので本当に心強くなったのを覚えています。私は一時期勉強をなまけていた時期があったのですが、呼び出されて活を入れられて、そこから立て直すことができたということもありました。医学部に合格して最初に報告したのも、自分を見放さず声を掛け続けてくれた曽我先生でした。
<Iくん> 僕は進学コースで受験しましたが、成績が良かったということで特進コースを薦められました。高校1年の時は英語の偏差値が低迷していたのですが、英語の先生の個別指導と猛勉強のおかげで大幅に上昇。大学では、もともと興味があった歴史の勉強をしたいと先生に相談し、歴史学科を受験しました。
<Kさん> 特進コースはクラスの皆と先生方が一つのチームのように感じます。高校1年の夏に4泊5日の勉強合宿があるのですが、その時に先生が「1-8は家族」(1-8:特進コース)と文字の入った特注の鉛筆をクラス全員にくれたんです。それをずっと大切にしていて、受験の時にはお守りとして持って行きました。
<Mくん> 模擬試験のときも、曽我先生が結果をチェックしてくれていて、アドバイスを下さいました。「一人じゃない」と思えたことが最後まで心強かったですね。
<Iくん> 8限の授業が終わっても教室に残ったり、図書室の大きな机を囲んでいっしょに勉強をしたりしている人も多かったです。休み時間も自分は世界史選択だったので、よく同じ世界史をとっている仲間と世界史の単語でしりとりをしたり、身の回りの出来事を世界史に例えたり、そんなことをやっていました。
<Sさん> クラス替えもなく少人数ということも良いところだと思います。勉強になかなか身が入らないときも、クラスの皆が頑張っている姿勢をみて、「私もやらなきゃ」と気持ちを切り替えることができました。私は決して真面目な特進生ではなかったので、高1の時には他校の友達と遊びにいったりもしていましたが、それでも「みんなは今、勉強をやっている」という気持ちがどこかにあって、遊びに行くときでも単語帳だけは持ち歩いていました。尊敬できるし、負けたくもない仲間に恵まれたと思っています。
<Sさん> 特進コースは、勉強量が多くて大変な面もあります。私も途中でしんどくなることもありました。でも、受験をやめたいと思ったことは一度もありません。それはなぜだろうと考えてみると、先生方がこんなに一生懸命になってくれるんだから、私たちが頑張らないわけにはいかないと思えたからです。
<Kさん> 支えてくれる先生に恩返ししたいという気持ちがありました。それで頑張れたところもあります。高3になると、それぞれ志望校の過去問を解いて大問ごとの得点率や問題の分析、対策などを管理するファイルを作ります。「赤ファイル」と呼んでいるんですが、そこには授業を受け持ってくれている先生方がそれぞれ感想や今後のアドバイスを書き込んでくれます。これを見てやる気にならない人はいないと思います。私は英語が得意だったんですが、英語を教えてくれている長島先生は、わからないところを質問すると私にあったプリントをわざわざ作ってくれる、そんな先生でした。英作文を提出すると紙の裏までぎっしり解説が書いてあって、今でも大切に持っています。休み時間でも放課後でも、いつおしかけてもいやな顔一つしないで丁寧に対応してくれました。本当に感謝しています。
<Iくん> 僕も長島先生には本当にお世話になりました。英検2級の二次試験対策として放課後何度も面接の練習をして下さったおかげで、それまで全然自信がなかったのですが、無事合格することができました。その後も入試まで、「スクランブル」という問題集の中から僕の苦手な構文や重要単語をピックアップして「これをきちんと覚えてこようね」と渡してくださるだけではなく、小テストもして下さるんです。僕は英語にかなり苦手意識があったのですが、「先生が自分の時間をこれほど割いてくれているんだから僕も本気でやらないといけない」と勉強にも身が入りました。
<Mくん> 毎朝、英語の小テストがあるんですが、長島先生はその答案にもコメントをびっしり書いて下さるんです!それを読んで勉強にもなりますし、「必死でやらなければならない」と気合も入りました。
<Iくん> 周りの友だちの話を聞いても、「特進ってこんなにいい環境なんだ」と思います。授業のクオリティが高いこともその一つです。僕は予備校の体験授業を受けたことがありますが、現代文では「この授業だったら絶対、上瀧先生の方が上だ」って思いましたし、世界史の授業を受けたときも「関先生の授業の方が楽しいし、頭に入ってくる」って思いました。英語の授業については、いいとは思ったんですが、それでも「こういう授業、学校でやっていたよな」と思いました。予備校に負けないだけの実力を持っている先生がこんなに揃っているんだ、というのが実感としてあります。現代文については、最新の授業を完コピして休み時間にみんなの前で披露するようなこともやっていました。一見ばかばかしいように見えますが、そんなことが苦手な英語をカバーできるだけの国語力につながったように思います。
<Sさん> 先程から何度も話に出ている長島先生は私が大好きな先生なんですが、その先生はワークブックの解答に正解だけしか書かれていなかったので、何百もある問題全部に解説をつけてくれて、本屋さんで売れるぐらいのものにして配ってくれました。それで理解が進み、問題演習にもスムーズに取り組めるようになりました。
<Kさん> 特進の授業準備は「どんな入試問題を教材として使うかというところから考えなければいけないから、予習にはかなりの時間がかかるんだよ」と先生が話していたことがあります。先生方は大変だと思うのですが、それだけ時間をかけて準備して下さるおかげで、私たちは分かりやすく充実した授業を受けることができたのだと思います。他校に自慢できる先生方です。
<Sさん> 勉強漬けの高校生活でしたが、「後悔してないか?」と聞かれたら、「全く! 」と答えます。逃げ出したくなることもありましたが、みんながこれだけ全力で、真剣に勉強に取り組んでいる環境って他の学校を探してもなかなか見つからないでしょうし、先生がこれだけ親身になってくれることもないと思います。私は合格が決まった時、大泣きしながら親より先に先生に報告の電話を入れました。3年間ここで過ごせたことは私の誇りです。
<Kさん> これだけ生徒のことを考えて下さる先生方に囲まれて高校生活を過ごせたことは幸せだと思います。高3の1月には出陣式といって、3年間習った先生たちが激励と応援をしてくれる会があるんですけれど、私はその時、感動して泣いてしまいました。先生方が熱心に指導して下さったおかげで最後までやり遂げることができました。こんなに頑張れる自分がいるということを発見できたことは社会に出たときの自信になります。
<Iくん> 僕は、正直に言って、もっと勉強できたのではないかと自分に厳しい目を向けてしまいます。でも、本気で悔しいと思うことができたのも、僕の人生では貴重な経験になりました。中学校まではそれなりの勉強をしていれば、それなりの成績をとれていたんですが、そんな中途半端な自分から脱皮することができました。失敗する悔しさや一生懸命やることの大切さを身に染みて実感することができました。大学では歴史の研究に没頭したいので、この悔しさを糧に成長していきたいです。
<Mくん> 医学部の勉強は難易度も高く、高校生活に引き続き必死で勉強する日々です。振り返ってみると、何か成果を上げるためには予習、復習、規則的な生活といったことを積み重ねて、一つ一つ課題をクリアーしていくしか方法がないと思うんです。特進コースの中でそのような習慣がついているおかげで、前向きに取り組むことができています。これからも目標に向かって努力し続けたいです。
特進コースに関わる教員と生徒は一つの目標を共有するチームです。生徒たちは「この3年間で、自分にできるすべてをやりきった」という誇りを持ち、卒業していきます。教員集団も、「生徒たちを伸ばすためにできることをすべてやりきった」という誇りを持ち、彼らを送りだします。以下で「伸びる、伸ばす」という目標達成のための特進コースの取り組みを紹介します。
河合塾、駿台予備校など大手予備校の模擬試験を校内で実施。年に4回から5回行う。模擬試験にあたっては3つの指導を実践。
特進コースの卒業生を招いて学習や生活について後輩にアドバイスをしてもらう。在校生は先輩たちに聞きたいことを事前に準備して会に臨む。毎年、後輩たちを奮い立たせるメッセージが寄せられるコースの名物イベントの一つ。
7月末の2日間で行われる。全学年の生徒は同一会場で同じ基礎力養成テストを受ける。テストは10分程度で、その場で採点、合格できたら次のレベルにステップアップしていく。これを4時間連続で行い、基礎力を固めていく。
7月に4泊5日で行い、学習習慣の確立を目指す。そのため英数国の授業だけでなく、自学自習の時間、グループ学習の時間を用意。互いの取り組みに刺激を受けながら高め合っていくという真の特進生になるための第一関門。
3年0学期(2年3学期)から卒業までの模試や学習のスケジュール、ぞれぞれの時期の到達目標を書き込んだ巨大カレンダーをホームルーム教室前のボードに掲示。